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「うつ」という状態②

前回説明させていただいたように
うつ病などの気分の浮き沈みに関係する心の障害(=困ったこと)は
世界的な取り決めによって作られた「診断基準」によって
症状の性質や強度、頻度、などを使って分類され、
医師によって「診断名」が付けられます。

例えば、
「大うつ病」
「気分変調性障害」
「気分循環性障害」
「双極性障害」
etc...
などといった診断カテゴリーがあります。

この「診断」では、原因や心の中の問題はとりあえず脇に置いて
外から(または本人の訴えの中から)客観的に判断できる
症状などをもとに決めることになっています。

「診断」をすることの意味は、
例えば、ひとつには、
投薬治療やカウンセリング、
休職、入院、社会的資源を使った生活援助などの環境調整、
本人や家族への情報提供というような
治療や援助の指針を立てるために役立つ
ということがあると思われます。

また、「診断名」をつけることで
その人(患者さん)が「怠けている」とか
「不真面目」だとかいうことではなく、
本人にもどうすることもできない「病気」であること、
だから「休養」や、「治療」、「周囲の配慮」が必要であるということを、
専門家の判断を根拠に保障する(お墨付きを与える)というようなことも、
「診断」の重要な役割ではないでしょうか。

こういった「診断」の役割は
内科でも外科でももちろん重要だと思いますが
(「インフルエンザですから自宅で寝ていてください。」など)
とくに、心の問題は外からは見えにくく、
周囲や本人の無理解や誤解から
症状の悪化や最悪の事態を招くことも
少なからずあると思われるので
精神科、神経科、心療内科などでは特に重要だと思われます。

話は少し脇道に逸れますが、最近あちこちで注目されている
軽度発達障害(アスペルガー症候群、ADHDなど)の場合も、
それらの診断をつけることで周囲の誤解や無理解から
本人や家族を守るということが重視されているようです。
(家族が本人を誤解する、また、本人が自分を許せない、
などのケースでも、きちんとした理解を得ることができれば、
もちろん、とても役に立ちます。)

実際の臨床の場では、
学問的に正確な診断そのものよりも
むしろ、目の前の患者さんが一番必要としている援助のために
とりあえずカルテや診断書にどう書くのが一番役に立つのか、
といった判断が優先されることも多いような気がします。
(私は医師ではないので詳しいことはわかりませんが。)

また、その他には、
直接ひとりひとりのの患者さんには関係がありませんが
それぞれの診断カテゴリーに分類された患者さんの集団について
どの薬、どの心理療法がどのように効果を発揮したか、
症状はどの程度続いて、どのような回復の過程を踏むのか
(・・・などなど・・・まだまだいろいろありますが)
といった臨床的な研究をする場合にも診断基準は役立ちます。
診断上の分類がなくてすべての症状が混とんとしたままで
ひとりひとりの研究者や臨床家が勝手なことを言っているだけでは
研究も成果を上げることができないので
そのためにも世界的な共通言語としての診断基準は
とても重要な役割を果たしているといえるでしょう。


ところで、最初に書いたように
現在の診断基準というのは基本的には
世界中の医師が誰でも同じ症状の人に
同じように下すことができるように
なるべく客観的な材料を根拠にするように作られています。

そのために、その診断そのものは
心の中の様々な悩みなどの込み入った問題については
「敢えて」何も触れずに分類が行われる仕組みになっているわけです。

そして、それら心の中の問題について
医療とはまたまったく違った視点から専門に考えていくのが
心理療法(カウンセリング、サイコセラピー)という分野なのです。

2009.2.23.